第14章 幻想花【A×M】
【 翔side 】
通勤途中に通るその洋館は、勢いよく生い茂った蔦のせいで、かつての綺麗な外壁は殆ど見えなくなっていた
一年前くらいからだろうか?
その洋館に俺と同じくらいの若い男が出入りするのを見掛けるようになった
時たま、門の外で会うと、
挨拶を交わすこともあった
サラサラな髪で笑顔が好印象のその青年は、いつもひとりでいた
何度か通るうち、宅配される牛乳を2本、
取りに来るのが彼の日課だって分った
俺はわざと遠回りをして、彼が出てくる時間に合わせて出勤するようになった
「相葉さん、おはようございます」
「おはようございます、櫻井さん…
いい天気ですね…」
挨拶を交わすまでにはなったけど、俺は彼の名字しか知らない
……それでも俺は、
彼のことが好きだった