第10章 サクラ咲け【M×O】
俺は寝る間も惜しんで、
死に物狂いで頑張った。
だって、合格したら、
智と付き合うことができる。
大好きな人を、俺だけの物にできる。
時々、悪戯みたいに交わすキス以外、
身体の関係はもちろんあの一回だけ。
俺たちは、共に俺の受験が終わるのを、
合格して晴れて恋人同士になれるのを、
心待ちにしていた。
そしてまた桜の季節がやって来た。
今年は例年よりも10日も早い開花予想で、
春が駆け足で来たような、
そんな暖かな3月だった。
『合格したら、連絡して。
あの場所で待ってるから…』
自信はあった。
手応えもあった。
ただ智をこの手に抱き締めたい、
その一心で、突き進んだ高3の1年間。
俺は1人で発表を見に行った。
大学の構内は賑やかだった。
発表を見に来ている学生、
その親や友人…
合格した人を祝おうと待ち構えている在学生…
サークルの勧誘のプラカード…
俺は、そんな人の波を潜り抜け、
掲示板の前に立った。
……………
『サクラ咲く』
俺は智に、そう一言だけメールした。