第10章 サクラ咲け【M×O】
「あっ…あの…」
「俺んちね、あんまり裕福じゃないんだ…だから、医学部に通うのも大変でね〜…」
「……あっ…えっと…」
「それで、学費のために、ちょっと…
だから、女がいいとか、男がいいとか、
言ってらんないって言うか…
…あっ…俺何言ってんだろ〜
君にこんな話…内緒にしてね…」
「………」
もうなんていうか、言葉が出なくて。
恵まれた医者の家に育った俺には、
衝撃的なその話の内容…
もう頭の中は真っ白で、ただ綺麗な先生の
顔をじっと見ていた。
どの位そうしていたのか…
静寂の中に、街の喧騒がわずかに届く頃、
「そろそろ帰ろっか…」
そう言って大野先生は立ち上がり、
俺に右手を差し出した。
俺はその手を握ることもできず、
ただ彼の顔を見つめていた。
「嫌われちゃったかな…」
少し笑って歩き出したその背中に、
俺は弾かれたように立ち上がって言った。
「志望校に合格したら、
先生、俺に抱かれてくれない?
もちろん、お金は出すから…」
すると先生はニッコリ笑って、
「お金はいいよ…頑張ったご褒美に…ね」