第107章 初恋。
★赤司征十郎★
-過去-
体育館にはもう誰の姿もない
俺は裏の方へと歩いた
いるはずのない彼女の事を想って
かすかな期待を抱きながら
自分でもバカげていると思う
ここに居てはおかしいだろう
は僕と同じ中学生なんだから、今は学校に行っている時間だ
それでも俺は止まることなく歩いた
体育館の裏の空き地
一本の立派な桜の木が立っているだけだ
誰もいない
俺はどうかしている
自分に呆れて戻ろうとした時だった
「ふぁああ〜〜〜」
桜の木の向こうから、大きなあくびの声と
伸ばした両腕がはみ出た
こんな気持ちは初めてだ
心臓が締め付けられるような
息が一瞬苦しくなるような
胸の奥からグッと何かがこみあげてくるような
俺はまだ、顔も見ていない木に隠れている誰かを呼んだ
「「/征くん」」
赤司「っ!?」
「っ!?」
お互いが顔を見ないまま、お互いの名前を呼びあった