第4章 名前。
★黒子テツヤ★
監督や主将に頼まれた次の日から、僕はさんに話しかけるようになりました。
もちろん、お二人に頼まれたからではなく、僕がさんと話してみたいと思ったからです。
さんは、人と話し慣れてないのか、いつも少し困った顔をしながら小さめの声で話します。
でも、さんのその反応が可愛くて、僕はついついたくさん質問をしてしまいます。^^
黒子「さんはいつも何の音楽を聴いてるんですか?」
と質問を投げかけると、一瞬困ったような顔をしながら
「あ、えっと・・・聞いてみる?」
と言ってくれたので、「ハイ」と返事をしてさんのイヤホンを受け取り耳にはめてみました。
さんの耳が小さいのか、僕には少し小さめのサイズでした。でも、そんな所も可愛いと思います。
イヤホンの奥から聞こえてきたのは・・・・・・
『ダムっダムっ!!キュッ!!』
『ナイッシュー!もう一本いくぞー』
・・・・・バスケ部の練習風景が思い浮かぶようでした。
黒子「これは・・・・・・。バスケですよね?」
と問いかけると、直ぐに
「そう。好きなの。バスケの音。」
いつもよりはっきりした口調で答えてくれました。
彼女は僕と同じ。バスケが本当に好きなんだと思います。
それが嬉しくて、頬が勝手に緩んでしまいます。^^
「ありがとう・・・黒子君」
っ?!初めて名前を呼ばれて驚きました!
でも、ついついさんには意地悪したくなっちゃうようで
「さんも下の名前で呼んで下さい^^」
なんて無理なお願いもしちゃいました。
「ふえっ?!・・・ててててて・・・テツ君・・・・」
っっっ?!嫌だと言われると思っていたのでまさか呼んでもらえるとは思わなかったです。
声を裏返しながら頑張って呼んでくれたのが凄く嬉しくて、いつもより元気に「はいっ^^」なんて答えちゃいました。
でも、彼女は未だに笑顔を見せてはくれません。
人に話しかけたりもしません。
きっと何か辛いことがあったのかもしれない。
さんにはただ、笑っていてほしい。心からそう思います。