第17章 赤い傘。
★★
真太郎は、黙ってずっと聞いてくれていた。
真太郎に話すたびに、私の中のモヤモヤが少しづつスッキリしていくようだった。
誰かに聞いてほしかったのかな。
全て話し終えて、フゥっと小さく息を吐いた。すると・・・
緑間「お前は・・・・は、人事を尽くしたのか?」
「え・・・・?」
緑間「お前は自分で最善の努力をしたのか・・・と聞いたのだよ。」
「最善の努力・・・・・」
そう言われて私は今までの出来事を思い返していた。
イヤホンをつけ始めたのだってそう、友達を作ってこなかったのだって、今の高校を選んだのも、マネージャーの手伝いを始めたのだって、全部全部、誰かに言われたから。
自分で何かを決めたのは・・・・本入部の時くらい。
そうだ。自分から言ったじゃない、一緒に日本一を目指したいって!なのに、皆と私は違うって・・・勝手に思い込んでたのだって自分じゃないか・・・・
緑間「まず最善の努力。そこから初めて運命に選ばれる資格をえるのだよ」
真太郎はそう言って眼鏡を上げる。
「私・・・・・私何もしてこなかった。自分から何も知ろうとしてこなかった。」
緑間「それなら、今から最善を尽くせばいいだけなのだよ」
「うん!私・・・・私頑張ります!今の誠凛バスケ部に釣り合うような、皆と一緒に笑えるような、そんなマネージャーになりたい!!!」
真太郎ありがとう!やっぱりあなたは優しくて親切だね。
緑間「フンッ。解決したのなら帰るぞ。一緒にいたせいで風邪をひかれたらたまらないのだよ。」
「・・・・はい。ありがとう・・・真太郎。」
真太郎は、私に赤い傘ではなく、黒い傘を渡した。
「え?」
緑間「今日の山羊座のラッキーアイテムは黒色の傘だったのだよ」
真太郎・・・・彼の優しさに触れて、私の強張った顔は少し緩んだ気がした・・・・。