第8章 優しさ故に 金木研
貴女がどんなにひどい人だったとしても、確かにぼくはあの頃、貴女のことが大好きだった。
恋心というよりかは尊敬に近くて、姉のように温かく優しい貴女がぼくは大好きだった。
トーカちゃんに珈琲の淹れ方を教えている姿も、ぼくに話し掛けて何気ない会話をしてくれる所も、全部が全部優しくて、偽りだとは到底思えなかった。
「レイさんは喰種が怖くないんですか?」
あんていくのメンバーは喰種しか居ないのに人間の彼女は戸惑う様子もなく働いている。
人間の味覚に合わせて新しいメニューを考え出したり、買い出しなんかもやってくれる。
彼等、ぼくも含めて喰種だとわかっていて
怖くない筈がない
けれど彼女は何処か困ったような苦笑いで言葉を紡いだ
「私はね、喰種とか、人間とか、どうでも良いんだ。だって生きてるんだもの」
「怖くないって言ったら嘘になるけど、こうやって受け入れて、人間と共に過ごそうとしてくれる喰種がいるなら、そういう喰種もいるんだな、って」
「一緒にいてみたいな、って思っただけだよ」
「ここの人、みんな優しいでしょ?人間でも喰種でも優しい人と仕事したいもの。どっちだって一緒にいたいって思ってくれるならそれで良いんだよ」
理由になっているようななっていないような。
だけど、なんだか彼女に聞いたことがどうでも良くなるくらいには彼女の言葉が素敵だと思った。
幸せになってほしかった
ぼくは彼女の事を何も知らなくて、知ろうとしてなくて。
いつもなんであんなに優しくしてくれるんだろうとか、なんで右手に指輪をしてるんだろう、とか細かい事にまで目が行ってしまって。
それなのに嫌われるのが怖くていつも結局何も聞けなくて。
それでも笑ってる貴方を見れば不思議と安心した。
ぼくに丸い眼鏡をくれた。
オシャレにつけてるのかと思っていたらちゃんと度が入ってて、よかったらもらって欲しいな、なんて言われてつい嬉くて笑ってしまった。
あぁ、しあわせだった__