第6章 記憶の中に 旧多二福《幼少期》
彼女は全部知っていた。
この先自分がどう扱われるかも、どういう人生のレールを引かれているのかも。
優しく抱きしめてずっと撫でていてくれた。
首についた赤い絞め痣、青い痣も所々にあって、はだけた袴にべっとりとついた液体、大人の男が彼女の細い首を絞めて馬乗りにしていた光景を忘れるわけがない。
だから、救わないと、壊さないと、全部。
ぜんぶ
そう決めた。
残酷なまでに優しく慈悲深い彼女のこころがもうこれ以上壊れてしまわない様に。
僕が彼女を
そう誓った筈なのに。
それを守れていなかったのは、それを忘れていたのはいつからだったのだろう。
リゼを逃がして、仕向けて、ずっとリゼを見ていた。
忘れてしまっていた。
"主(二福)、私の主(世界)"
そう、彼女が自分に言ってくれた時、酷く安心してしまった。
自分のものでいてくれる、そう、思えたから。