第4章 優しさの境界線《中学編》 緑間真太郎
最初は見た目はどうでもよかった。
ただ、人事を尽くして出た結果、同立だった人物に興味が湧いて。
始めて声を掛けたのは自分だった。
教室の隅の席、一人で誰とも話さず手元に返されたテストを見ていて。
何処か影のあるような、哀愁を感じるような、そんな印象を覚えた。
よく見ればテスト用紙には間違えた部分を青で書き直してあり、間違えた部分をノートにまた書いて解き直していて。
「五十嵐さん、で合っているだろうか」
「え、あ、はい、五十嵐です」
びくり、と大きく揺れた肩、振り返った声音も表情も何処か困ったような緊張したような、今でもよく覚えている。
最初は何処かよそよそしく、堅かったが、少しづつ柔らかくなり、対応が変化していった。
一緒にいる時間も増え、バスケ部のメンバーにも紹介するくらいにはとても仲が良い。
彼は自分の数少ない親友の一人だ。
とても信頼している。
そう、胸を張って言える。
バスケ部のメンバーとも仲が良いのだからどうか、と誘ってみたものの、ダンス部だから、と断られてしまった。
実際彼はとてもダンスがうまい。
それもプロ並みに。
文化祭の前夜祭や後夜祭、出し物でも激しくしなやかに、かつ大胆で華麗に、一人で踊っていた。
彼もなかなかの多才で、多くのことができた。
天才ではなく、努力を重ねた才能で。