第2章 甘美なこころ 大倉燁子
「条野、盗み聞きとは下衆な。その耳をもぎ取ってやろうか?」
チィッ、と苛立たしげに舌打ちをする燁子に条野はやれやれと息を吐く
燁子は条野が近くにいたことに気づけなかった。
「私に気づかないほどご熱中とは...」
「黙れ、さもなくば殺すぞ」
先程の柔らかい表情は何処へやら...本人は気づかないほど彼女へと意識を集中していたわけだし、その時の表情は部下が見たら卒倒モノだろう。
それくらいには優しげで、嬉々としている、と条野は思う。
単なる友情か、否_
「直接言って差し上げればいいじゃないですか。そんな遠回りをしなくとも。『貴方が好きだ』と『愛おしい』のだ、『側にいて欲しい』、と。副長が仰ればレイさんは喜んで自分の意思的に移動してくれるのでは?」
「は...」
条野の発したそれに燁子は驚きの声と表情を浮かべる。
それに対して条野が不思議そうに首を傾げた。
「気がつかなかったんですか...?」
「…」
何時もならば反論が返ってくるものだが黙り込んでしまった燁子にやれやれとまた息を吐く。
条野自身もこの部隊に彼女が来てくれるのならば損はない、むしろ好都合だ。
そうか、そういうことか
何処か決意したような表情を浮かべた燁子はパッ、と顔を上げ彼女の元へ駆け出した。
世界一大切で愛おしい"親友"を、自身の所属する部隊へと引きずりこむための作戦を頭の中でくるくる回転させながら__