【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第44章 呪術廻戦✿真人「人間の女の子」
『ねえ夏油』
「んー?」
『この頃、返事が雑になってきたよね。もしかして……怒った?』
お互い違う本を読んでおり、隣りにいる夏油に期待する眼差しを向ける真人。しかし、南国のビーチの波よりも穏やかな声で答えてきた。
「いまこの本に夢中でね」
『それは?』
真人の問いに夏油は口元を細めるだけ。仕方なく本の中身を覗き見ると途端に気分をげんなりさせた。
『う゛っげぇ~。夏油ってそーいうのがシュミ?』
「まあね。猿共ならではの娯楽の一つさ」
『ヘンなの。その辺にいるの捕まえて来ればいいのに』
「それより話って?」
『あぁ。それなんだけど……』
また、なんでもないゲームをしようかと思った。
ルールは簡単。相手の名前を呼んで返事をしたら「なんでもない」と相手をイライラさせるゲーム。手始めに漏瑚にやったら二回目で爆発。次は花御で試したら何度目かで植物のように黙った。陀艮にやろうとしたら仕掛ける前に突然泣かれた。陀艮は喋れないけど花御のことを気に入っているならではの反応だと思った。
その逆も然り。
花御はキレ易い漏瑚と違って賢いからゲームをはじめる以前に永久に黙る可能性があった。それじゃあ詰まらない。だからと言って愉快な漏瑚を"玩具"にし続けるのも何だか可哀想と憐れんで、最後のターゲットである夏油になった。
「ん?」
『人間の女の子と付き合うにはどうしたら良いのかなって』
「これまたどうして」
『ただの遊戯さ』
なんでもないゲームで夏油を怒らせてみたかった。だけど夏油は中々手強い。人間のクセに感情を表出しない気味の悪さ。だからそんな奴はどういう風にどんな場面でどんな感じで怒るのか、反応するのを楽しみにしていたが今日の本題は別。たまに夏油は心理を覗いてるんじゃないかって目をするから面白い。
「うーん……恋愛こそ、既に猿の遊び と私は思う。他の動物にはない肉体的、精神的に満たされたい欲求の一つ。憎み恐れた腹とは違って限りなく完結されない無限なもの。真人は仮に女の子と付き合ったとして一体彼女に何を求める……?」
夏油の問いに真人はビーチチェアに背中を預けた。