【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第43章 呪術廻戦✿禪院直哉「性悪男」
中学校最後の夏。古びたアパートの玄関扉を開けると父と母の前には番組で見るような札束が並べられていた。の姿をみると二人は、涙しながら笑みを作ったのであった。
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──…
「今日から此処がお前の家だ」
春休みになり、連れて来られたのは京都にある時代の趣のある広い屋敷。どこもかしこも広大で此処が自分の家になるとは到底理解が追い付かない。
「ボーっとせんで靴を脱げ。お前の部屋に案内する」
脱いだ靴を隅に寄せ、当主である禪院直毘人の後ろについて行く。
(今日からこの人が私のお義父さん……)
はこの男に買われた。父は元々この家の出であったが、嫌気が差して出奔したとのこと。だが、が術式展開できることを知って禪院家の者達が接触してきたのだ。
呪いの存在は知っていた。
対処は父から教わっていた。
だからといって呪術界について父から詳しく聞いたことはなく、術師としての自覚もほぼなし。目の前で金銭のやり取りをみたは両親との離れ際、涙を滲ませることもなかった。
「茶の間はこの廊下の突き当りを曲がった先にある。厠は真っすぐ進んだ所だ。聞いてるか?」
「あ、はい……。すみません」
「心ここにあらずか。ひとまず休め。夕食の時間になったら使用人が来る」
「はい。有難う御座います……」
直毘人が部屋から出ていくとぐるりと部屋の中を見渡す。家から持ってきた段ボール箱は積まれ、床の間には掛け軸や活けた花が飾られており、箪笥は空っぽ、広めの押し入れには布団が一式。
「何すればいいんだろう……」
両親に見離され、良くも悪くも分からない禪院家に引っ越してきて、やるべき事はあるのに唐突な虚無感に襲われる。夢なら良いのにと寝床につくたび思った。両親が口にしたことを信じたくなかった。
「私よりお金が大事だったんだ」
アパートより広い部屋。今よりいい暮らしができると言われてもはそれなりに幸せだった。けれど離れたくないと逆らわなかった自分自身も責められず、溜息を吐こうとしたら襖から若い金髪の男が現れた。