【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第35章 ハイキュー✿北信介「ちゃんと、隣りに。」
「おはよう」
朝練が終わって教室につくと、信介は隣りの席に座る女子に挨拶した。
「おはよう」
挨拶は礼儀、それに短い会話みたいなもん、と信介は思っている。隣に座った女子は去年は隣りのクラス、その前も隣りのクラスだった。高校最後の年になって信介の隣に、が座ることになった。
「今日の雲、放課後になったら土砂降りやろな」
はじめは一言程度の挨拶だった。「おはよう」といったら向こうも「おはよう」と返してくれる。とても短いやり取りだった。けれど信介にとっては大きな進展だった。
同じクラスになるだけでなく隣の席に座れたこと。──誰かが見とるよ。そう言ってくれたばあちゃんの言葉を思い出した。同じクラスに選ばれたのはクラス分けの際、先生たちが考え出した結果だ。今までずっと隣りのクラスだったのにどういう過程があって同じクラスに選ばれたのかは理由を聞かなければ判然としない。
おそらくは2年生のときにとった進路アンケートが大部分を占めたのだろう。大学進学、専門学校、就職するかを調査されて、それを参考にクラス決めが行われたんじゃないかと信介は推測した。
「朝の天気予報じゃ小雨程度って聞いたけど折りたたみ傘だからちょっと心配」
「早めに帰ったら強い雨に当たらなくて済む。俺は部活あるから完全装備やけど」
のいう通り、朝の天気予報じゃ夕方から小雨程度の雨予報だった。信介は朝起きて西側の空を自分の目で確かめたら、どす黒い雨雲が向こう側にでていた。あれは大量の雨粒と猛烈な風を吹かせる嫌な色だと祖母から教えてもらっていた。あの黒い雲は災いをもたらすって、ばあちゃんが注意してくれた雲だ。
「北くんにいわれると本格的に降ってきそう。今日は早く帰ろうっかな」
「そうするのがええ」
今は隣りに座って、あれはなんの雲か教えることができる。もう背中越しに話し掛けるのが嘘みたいに、ちゃんと会話できるようになった。目もちゃんと合うようになった。どんなに小さい共通点でも、同じ朝の番組をみてると知ったときは胸が騒がしくならないはずはなかった。