【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第31章 名探偵コナン✿服部平次「先生へ」
先生と初めて出会ったのが…秋。
先生が観覧車で告白してきたのが…秋。
卒業して初めて先生とキスしたのが…春。
先生と同棲生活を始めたのが…秋。
ホテルで先生からプロポーズされたのが…春。
そして、先生と初めて出会った記念日にあわせてバージンロードを歩く予定だった。それなのに、先生は…大事故に巻き込まれてしまった。
私が病院に駆けつけたときには集中治療室で眠る先生。
消毒液の匂い。
一定に鳴る機械の音。
今夜か明日が山だと言われ、いっぱいたくさん先生に声をかけた。目を開けていなくても声を届くと言われたから、先生の名前を何度も呼んで…戻ってきてほしい想い、伝え切れなかった感謝の想いを伝えた。
私を見つけてくれてありがとう。
私に話しかけてくれてありがとう。
私に触ってくれてありがとう。
私を好きになってくれてありがとう。
一緒に笑ってくれてありがとう。
「───…」
先生が一瞬、動いたような気がした。
気付いたら一定に動いていた心電図モニターは戻ってこなくなって、変わらない周波数が地平線のように伸び続ける。
先生の名前をいくら呼んでも帰ってこない。
さっきまで脈を打っていたのに。取り乱した気持ちを抑えきれなくて嗚咽をあげた。暫くしたら頭がぼーっとして泣き疲れて、もうこれ以上言葉にできなくて、医師はペンライトを取り出した。
「13時02分…死亡したことを確認しました」
先生と私は結婚する予定だった。
そのときに入籍する予定だった。
真っ白なウエディングドレスではなく真っ黒な黒装束に身を包んで、真っ白な花に囲まれた先生の遺影。
たばこを咥えることも、おちょくってくることもなくて、綺麗に眠った顔をみせて火葬場へと行ってしまう。お骨になっても先生と離れたくなくて、………。
「──…そこの姉ちゃん。いま自分、メッチャ後先死ぬことしか考えておらんやろ」
「!!…」
「アンタを死なせたりせえへん。俺は、アンタに生きる意味ちゅうモンを教えたる」
名前も知らない色黒の男の子にぬくもりを伝えられるように強く抱き締められて、先生の後を追うことを止められた。
それが私と、服部平次との出逢いだった。