【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第26章 ハイキュー✿影山飛雄「ピーチ」
高校生活1学期早々…、クラスメイトのせいで忘れかけていた屈辱的なあだ名が蘇った。小学校のときが最初…、中学校に上がってからはすっかり無くなったと思っていたのに、再び災厄が訪れた。
「………はぁぁ」
当然のごとく、学校へ行く足取りは重い。
憂鬱な気分とは裏腹に眩しい日光が降り注ぐ。道のほとりを自転車で走っていると後ろから追い抜く風。元気に自転車を漕いだ背中は遠ざかって行き、の口から長い溜息が零れる。
(………学校…行かなきゃな…)
引き返す勇気もなければ、サボる勇気もない。小学生染みたあだ名なんかに負けて堪るもんかと自分を奮い立たせ、自転車を漕ぎ進めた。
1年生の昇降口に到着し、今のところ見知った顔がいなくてひとまず安心する。
あだ名でいじってくるのは一部の男子だけ。結局は教室で顔を合わせることになるのだが、できる限り顔なんて見たくない。そう思っていた矢先…──
「デカケツ」
「っ…」
声と同時にお尻に張りついた手のひらの感覚。
上から目線の声のトーン。
張りついた手がぐるっと円を描ききる前に振り向き、背後に立っていた男に睨みを利かした。
「デカケツに挨拶してる途中だろ。逃げんなよ」
「………」
後ろに立っていたのは再びそのあだ名を呼び起こした影山飛雄。
睨んでいても相手は怯んだ様子はない。影山は悪気もなく初対面で人のことを「デカケツ」呼ばわりし、そのあだ名がすっかり定着してしまっている。
(悔しいけど、何にも言い返せない……っ)
コンプレックスは他にもたくさんあるけど、一番この大きなお尻が大嫌いだ。自分でも分かっているから余計に辛い。
何も言い返すことをせず、影山から逃げるように速足で遠ざかった。