【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第24章 僕のヒーローアカデミア✿ホークス「片翼のビスケット」
の両腕を持って飛行を続け、誰も追ってきていないのを確認して高いタワーに着地する。
「よいしょ…っと。、腕痺れてない…?」
「うん。大丈夫だよ。うわ~すごい!本当に出れちゃったね!ありがとう、啓悟っ」
「どーいたしまして」
はとても笑顔になってくれた。帰ったらこっぴどく叱られるだろうけど、これが間違った選択だとは思わない。
「外の風、気持ちいい……」
「ここなら障害物もないから全身で風を感じられるな。あやまって落ちるなよ…?」
「えへへ、そしたら啓悟が助けてくれるでしょ?」
「そんな殺生な…」
「私も一緒に飛べたらなぁ……」
「…」
生まれたときから左側にのみ生えた3つの片翼。羽全体を手の筋肉みたいに動かすことは出来るが、俺のように1枚1枚羽を操ることはできない。
個性を扱えるようになれば…と協会側も試行錯誤を繰り返したが、はそこまで器用ではなくて、その羽はみるみるエネルギーをため込み…大きく成長するだけだった。
「……風、気持ちいいな」
「うん……。ありがとう、啓悟」
「……、」
気付かれないように奥歯を噛みしめる。
こいつにありがとうと伝えられるたびに、俺はそれしかできないのかと自分の無力さを思い知る。
ありがとう、なんて切ない言葉…。
いつかその声さえ聞けなくなってしまうのに、感謝されることがなにより辛い。
決して悪い言葉じゃない。
だから聞きたくないとも言えなくて…。
と二人で、遠くに見える景色を刻み込む。
「………もうすぐ、ライトアップの時間帯だ」
太陽が隠れると月が顔を出して、街の明かりや車の明かりがいろんな色の光を灯しはじめる。腰を預けている街で一番高いタワーも、時刻になると眩く煌めいた。