【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第22章 僕のヒーローアカデミア✿治崎廻「愛してる、だけじゃ伝わらない
治崎が手渡したのは今まで使っていた携帯そのものだった。だから両親の連絡先も入ったままだし、簡単に連絡が取れる状況…。
「こんなやり方されると、裏切れないよ…」
両親に「無事終わったよ!」といち早く返信したかったが、後から治崎がみてどう思うだろう…。後がつかない公衆電話の存在も目に入ったが、治崎の好意すべてを裏切ってしまうようで負い目を感じる。
「新幹線のチケットもどうしよ…」
外に出て自由になったはいいけど、先が見えない未来にぼんやりと涙が薄っすらと滲む。
「でもまっ、試験できたから悔いはなし!」
迎えにきた玄野が運転する車に乗り込み、後部座席から外の景色を眺める。暗い表情に見えたのか、おもむろに玄野が話し掛けてきた。
「…現実。ようやく見えやしたか?」
「……まだ、落ち込むのは早い気がします」
「そうですかい。でもまあ色々お疲れっした。姐さん」
「………んぬ?」
「廻の妻になられるお方ですから、これからは姐さんとお呼びしますよ。団員一致で」
「なるほど…。若頭>その妻>幹部みたいな感じですか?」
「ええ。図式はご想像の通りで」
「仮なのに?」
「滅多なことをしない限り消されやしないでしょう。廻はどうやら、姐さんに骨抜きにされちまったみてえですから」
「…」
治崎は数時間のうちに変わった、とでも言いたげな玄野の口振り。治崎のことを下の名前でいう限り、今まであった人たちの中で最も親しい存在なのかもしれない。
「俺も短時間でしかお逢いしてませんが、姐さんは…若いわりに無鉄砲じゃあない。組長のようにお優しい方だ。廻を…、頼んます。色々と」
「……考えておきます」
のなかでは婚姻は保留状態。これから離れるかもしれない両親、そして…治崎の存在。
「でも…。天秤にかけられないくらい私の中でも、治崎さんのこと惚れちゃってますね…」
「廻に直接いってあげたら飛びあがって喜びそうだ」
「あっ、玄野さん、今のは内緒ですよ!お喋りマシーンの音本さんにも言っちゃだめですからね!」
「くふっ、音本がお喋りマシーンって…」
「え。だってあれ、絶対そうですよねェッ?!」
その頃、噂されていた音本はマスクを着けていたのにも関わらずクシャミをして、治崎に殺気を飛ばされたのであった。
