第6章 君の手料理
「で、結局今日はなんで来てくれたの?」
店の前で蓮巳たちと別れて、あやと歩きながら今日の経緯を説明した。
「私は大したことないと思うんだけど…それ言ったら店長の方がすごいよ? 世界中歩き回って料理修行してたんだって」
「マジか」
「うん。たまに店長のお料理が食べたいっていろんなお客さんが来るの」
あやの話を聞きつつ、俺は仕事中のあやの姿を思い出していた。いつもと違う職人の目はとても鋭く、真剣で…あんな風にとは言わないが、あやから注目されるのはなんだか羨ましかった。料理相手に言っても仕方ねぇけど。
「でも、よかった」
「何がだよ?」
「紅月、とっても良い顔できるようになったね。特に紅郎くんと蓮巳くん」
安心した笑みを浮かべて言われたことに、俺は面食らった。
あやは紅月が出来た時から何かとイベントに来れる限り来てくれた。バイトのある日は来られなかったが、それでもあやが見守ってくれる中で、たくさん嫌なものを見せてしまっていたから…
「そうだな…今はあいつらと一緒ステージに立てることと、お前と一緒に居られることが俺の幸せだよ」
「だめだよ」
「ん?」
「紅郎くんはこれからもっと幸せになれるんだから、いっぱい色んなもの見て?」
そうだな…こいつは…
ーーー そんな寂しいこと、言わないで… ーーー
傷つけるしかできない俺の手をとって優しく引っ張ってくれたんだよな…その先には……
「紅郎くん?」
「なぁ、あや。ありがとな、いつも」
「ん?」
その先に行っても、あやとずっと一緒にいさせてくれよ。