第5章 ひとそれぞれ
「どうかした?」
「いや、なんでも…」
胸、でかくなったな…前は俺の手が余るほどだったのに、いつからか手にちょうど収まるくらいに…
「鬼龍くん、いまエッチなこと考えてたでしょ?」
「……っ」
「視線が胸に向いてたらわかるよ」
バレてた…にしても、水瀬が照れて恥ずかしがるところなんてあんま見ねぇから新鮮だな。
「早く採寸済ませようよっ」
「お、おぉ」
水瀬に急かされて、採寸を済ませた。採寸をしてわかったが…
「お前ちゃんと食ってるよな?」
「一緒によく食べてたよね?」
見た目の割に水瀬はよく食べる。昼飯にお重の一段分は持って来て食べているのは中学から知っている。なのに、小柄で体型をキープをし続けている。むしろ小柄すぎてもっと食べるべきではと思うが、これ以上食べさせるのは……
「今日もお重でお昼ご飯作って来たのに」
「相変わらずだな。よく作れるな?」
「朝は菜園の世話もあって自然と早く起きるからね」
そういや趣味で園芸してたな。よく収穫した野菜とかくれるし、あれ美味いんだよな。
よく食べるのって園芸で体力使ってるからか…つーことは…現状維持か。
「ほんと、働きもんだな」
「鬼龍くんもそうでしょ?」
「…そうか?」
「だって、アイドルの仕事も衣装の仕事もいつも頑張ってるもの」
ほんと、敵わないな…
「今度部活で新しいレシピ教わるんだ。上手くできたら一緒に食べよう」
「あぁ。楽しみにしてる。高校入ってから料理の腕上がったな?」
「ほんと? それならやって来た甲斐があったよ。私、料理は最低限だったから」
中学の時点で水瀬はそれなりに料理はできていた。でも、高校に入って、家庭科部に入ってから料理の腕が上がった。深風が料理得意だからよく教わってると言ってたな。
「それに美味しいご飯作れたら鬼龍くんといっぱい作れるし、疲れた時にも美味しいもの食べてもらえるもんね」
だから……
「その気持ちだけで充分、嬉しいよ」
「鬼龍くん?」
「ほんと、俺にはもったいねぇくらい出来た彼女だよ、お前は」
ほんと、水瀬はひだまりみてぇで、あったかくて、いつも笑顔で俺を待ってくれてる。
「そんなことないよ。たまに独り占めしたい時もあるし」
「そんなの可愛いもんだ。それは俺も思ってるしな」