第5章 ひとそれぞれ
結局、水瀬への日頃のサービスは浮かばないままになってしまった。
深風たちは普段どおりで充分だと言ってたが、俺からするとなんかした方がいいんじゃないかと思うんだが…
「あれ、鬼龍くん?」
「おう、水瀬。いま帰りか?」
「うん。鬼龍くんは珍しいね、こんなに早く帰るなんて」
「あぁ、仕事に一区切りついたからな」
校門を出たところで水瀬と会って、そのままなりゆきもあって一緒に下校している。そういや、こうやって帰るのも久々だな。
「そっか…あ、そういえば鬼龍くんは最近したいこととかある?」
「なんだよ、藪から棒に」
「いや、その…最近お家デートとか3人で出かけることが多いから鬼龍くんのやりたいことやれたらなって…」
それ、俺のセリフなんだが、取られちまった。
水瀬も同じこと考えてたのか? 俺は水瀬といれりゃなんでもよかった。家も誰もいなけりゃ水瀬を堪能できるし、一緒にいられることも多いからそれはそれで居心地が良かったのだ。
「そうだな…」
やりたいことか…やりたいことっていったら…
「水瀬のフルコーデか」
「え? フル?」
「おう。まあ、着せ替えみたいなもんなんだけどよ…ダメか?」
水瀬は見た目がいいだけにいろんな衣装を着たら映えるだろうし、似合うだろう。俺の創作意欲も湧くってもんだ。
「ううん。ダメじゃないよ? じゃあ、今度はショッピングかな?」
「いや、俺が作る」
「え!?」
「ダメか?」
「いや、ダメじゃないけど、採寸どうするの?」
「……今から家でどうだ?」
水瀬は私服だと動きやすさ重視でパンツ系が多いからな…普段使いもしやすいワンピースでアレンジしたらなんとかなるだろう。こういうのは本来斎宮が専門なんだが、水瀬のだけはどうしても俺が作りたかった。
「お邪魔します」
「おう、先に部屋に入っててくれ」
家に帰ると、妹はまだ帰っていなかった。メールでは友達のところに遊びにいってると書いていたが……
茶の用意をして、部屋に入ると水瀬はカーディガンを脱いでいた。
セックスしててわかってはいたが……