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短編集/鬼の木漏れ日

第5章 ひとそれぞれ


「失礼するぜ。蓮巳、今いいか?」
「あぁ、鬼龍か。どうした?」
「今度の紅月の衣装のデザイン案出来たから見といてくれ」
「承知した」
「じゃあ、俺は行くな」
「あ、鬼龍くん」

 生徒会室に鬼龍さんが入られて、敬人さんに書類を渡されるとそのまま生徒会室から出ようとした時に天祥院さんが声をかけられました。

「君は自分の彼女がいるとして、彼女と2人きりになる時間は多いほうがいいと思うかい?」
「……そうだな。我慢させちまってる分はサービスした方がいいと思うぜ?」
「なるほど。ほら、敬人も菜子にサービスしてあげないと」
「何故そうなる。鬼龍、悪いな。変なことを聞いて」
「いや、大丈夫だ。むしろ…」
「ん?」
「むしろ俺が今実感させられたからな」

 珍しく肩を落とす鬼龍さんの姿に私たちは度肝を抜かれました。そもそも鬼龍さん、彼女いらっしゃったんですか?

「ということは、いるのか?」
「あぁ…」
「いつから付き合ってるんだい?」
「中2からだな。妹も小さかったからよく家に来る時には遊んでくれてな」
「なんかどこかで聞いたような…」
「最近は部活や仕事か忙しくてな…出かけるにも買出しだとか家でのんびりしようとか言ってくれてよ…」
「それはまた…」
「出来た彼女だが…甘えてないか?」
「だから困ってんだよ」

 なんだか鬼龍さんのお悩み相談になってきていますね…天祥院さんは、あ、なんか面白がってますね。

「ちなみに鬼龍さんの彼女さんって、普通科の方ですか?」
「……なんでわかった?」
「私の友人に条件に合う方がいらしたので…」
「あぁ、水瀬か。納得した」
「なるほどね、さっきの子の彼氏が鬼龍くんなわけだ」

 皆さん、共通認識になったところで……

「あやは今のままでも満足そうでしたよ? 一緒にいられるだけで充分と言ってました」
「それは俺も同じなんだけどよ…あいつ滅多に我儘言わねぇからよ…」
「我慢させてるんじゃないかってことだよね?」
「あいつ、自分のことにはてんで疎いからな…」
「あー…」

 あやは自分のことには鈍いです。可愛くて、家事もできるからモテてるのに、それを全部フラグをへし折ります。彼氏さんがいるということもありますし、彼氏さんの話になると惚気は炸裂します。被爆します。何人の男子生徒が犠牲になったことか…
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