第2章 伝えたい
水瀬は我儘も言わないから、時々不安になる。なんかやりてぇことがあれば言って欲しいし、辛いことがあれば出来ることがあるかわからないが話してほしいなんて、俺の方が余程欲張りだ…
「はぁ…」
「……ため息つくと幸せが逃げるよ?」
「っ!? 水瀬?」
どうしたもんかと考えてたら首筋に冷たいものが当てられて思わず後ろを振り向くと水瀬がペットボトルを持って立っていた。
「購買で飲み物買ってたら蓮巳くんが来て、鬼龍くんに喝を入れて来いって言われたんだけど…なにかあった?」
心配そうな顔で言われてしまうと、とてもじゃないが嬢ちゃんに水瀬をとられたみたいで嫉妬していたなんて言えるわけがなかった。
「いや、べつに…」
「鬼龍くん、そう言う時いつも柄にもなく悩んでるよ?」
「は?」
「違うんだったらごめんね? 練習、頑張って。多分蓮巳くんももうすぐ戻ると思うから…」
「水瀬っ」
苦笑いでペットボトルを置いて、扉に向かおうとする水瀬の腕を掴んで引き寄せて抱き締めた。
「え…?」
小さくて、また身体が冷えているのか冷たくて、でも、練習後で火照った身体にはちょうどいいくらいの冷たさで心地よかった。が、そんなことに浸ってる場合じゃない。
「悪ぃ…ちょっと、その…」
「……?」
「えっと…充電、させてくれ…少しでいいから…」
何をどう言ったらいいか分からないまま言ってたら、水瀬は返事はしないで俺のジャージを恐る恐る掴んだ。
「ご、5分くらいなら…」
「そ、そうか…」
こんな困らせる形は本当はダメなんだろうが、でも、それでも、とにかく今だけは水瀬を独り占めしたかった。