第5章 愛されて頂けますか
「それに琲生、まだこの子には話していないのだろう?」
「え?」
話す。
何を?
言葉にするかわりに、隣のハイセを伺うように見上げてみれば。
彼は視線だけを一瞬だけあたしに向けただけで、またそのまままっすぐに前を見据えた。
まるで。
パパの言葉を待つように。
「え」
あれ。
そーいえば。
ハイセを伺うように見上げた先で、視界に入ってきたのはハイセのご両親、で。
あたし、たぶん会ったこと、ある?
「……………ハイセ?」
「ええお嬢様、ご正解でございます」
疑問を投げかけるかわりに、視線をご両親へとむけたままに問いかけた言葉に。
隣でハイセは、あたしに恭しく頭を下げた。
違う。
ハイセはパパの言葉を待っていたわけではなくて。
そうじゃ、なくて。
「…………」
和泉。
和泉、琲生。
そうだ。
「お久しぶりでございます、お嬢様」
ぶつかった視線をふりきるように頭を下げるのは。
「………和泉、さま」
「ええ」
「ママの」
そう。
ママの。
「…………」