第5章 愛されて頂けますか
…………罠。
確かにこれには、作為的な陰謀の匂いが強くなってくるわね。
あれ。
でも待って。
「ハイセ、そのスーツは?帰省?実家?」
「ええお嬢様、それは皆さまお揃いののちに、お答えさせていただきます」
「?」
相変わらずにこやかに目を細めながら笑うハイセに、手を引かれて向かった桔梗の間。
そこではすでに、和やかに会話が飛び交っていた。
「ただいま戻りました。―――――旦那さま」
「ああ、なんだい、琲生」
「これは、どーゆーことなのか説明して頂けますか」
「まぁ、なんて口の聞き方をするの、この子は」
「西園寺さま、申し訳ございませんうちの愚息が」
襖から奥、つまり上座に座っているパパに対して、大袈裟に頭を下げるのはたぶん、ハイセのご両親。
だけど。
それでもハイセは、ただまっすぐにパパを見据えていた。
「おまえが言ったんじゃないか、娘と結婚をしたいと」
「確かに、お伝え致しました」
「だから、こうしてこの場をもうけてやったんじゃないか」
当たり前のように淡々と言葉にする父に、沸騰しかけていた温度が下がっていく。
あきれすぎて、怒る気にもならないわ。