第5章 愛されて頂けますか
「……お嬢様」
「………」
「同じ気持ち、と、受け取ってもよろしいですか、これは」
「………」
「お嬢様」
わからないんだもの。
答えようがないじゃない。
人を好きになんて、なったことないもの。
どんな気持ちかなんて。
誰も教えてくれなかったんだもの。
「いなくならないで」
「お嬢様?」
懐かしい匂いのするハイセの胸に顔を埋め込めば。
その大好きな香りに、癒された。
「あたしの許可なしに、いなくならないで」
ハイセが、いる。
なんでこんなに、胸が熱くなるんだろう。
ハイセがいなかった1ヶ月が、なんでこんなに、長く感じたの。
なんで今、この腕を離したくない、って。
そんなことを思うんだろう。
よくわからないけど。
絶対この腕だけは離さない。
って。
この時心からそう思ったんだよ。
だけど。
「申し訳ございませんお嬢様。旦那さまからは、何も聞いておられませんか」
「え?」
「………使用人の、方々からは」
「?」
少しだけあたしと距離を開けたハイセを、首を傾げてキョトン、と見上げ見れば。
目元に片手を充てて、深くため息を吐き出すハイセの姿。
「ハイセ?」
「これは、罠でございます、お嬢様」