第5章 愛されて頂けますか
え。
待って。
待って。
1回、落ち着いて。
どーゆーこと?
「1度も顔をあげない、あなたが悪いのですよ」
「え」
頭がパニックを起こしているあたしとは正反対に。
余裕の表情で、ハイセはあたしの顎に手をかけた。
「お相手の方と1度も目を合わせないのは、失礼ではありませんか?」
「……ごめん、なさい」
なんだろう。
あたし、なんで簡単に謝った?
なんで。
こんなに口が渇くの。
喉が張り付いて、声が震える。
「ええ」
「…………」
目を細めて笑うその仕草は。
間違いなくハイセのもの、で。
なぜだか目が離せなかった。
そうだ。
ハイセ。
ハイセ、だ。
「ハイセ」
「ええ」
「ハイセ………っ」
無意識に、緩みそうになる顔に力を入れた。
だけど。
それでも耐えきれずに零れた涙を、顎に手をかけたまま、ハイセは少し屈んで全部舐めとっていく。
「僕がいなくて、寂しかったですか?」
「…………」
「僕がいなくて、泣いてました?」
「………」
「お嬢様?」
「………キライ」
少し屈んで、視線を合わせてくるハイセの両腕をしっかりと握りしめながら。
出てきたのはそんな可愛いげのない一言だった。
「………ええ」
だけど。
ハイセは、いつものように目を細目ながら。
満足そうに言うのだ。