第5章 愛されて頂けますか
そのよく知る、声に。
鏡にうつる、佇まいに。
一瞬だけ、時間が止まった………ような、錯覚さえ覚える。
だって。
今、ここにいるはず、ない。
「はい、せ?」
「はい」
ハイセ。
確かに。
目の前で高そうなスーツを見事に着こなし、にっこりと微笑むのは紛れもなく知った顔。
「なんで……」
「こちらで、見合いの最中でございます」
「え」
『旦那さまから見合いを薦められて………』
「あれ、でもパパ、は………」
ハイセのお見合いに、行ってないよね。
だってあたしと、いるもの。
あたし、と………。
あれ。
「お嬢様、お相手の方は、どちらの方でしたか」
「え」
「お嬢様も、お見合いなのでしょう?その着物、よくお似合いでございます」
「あ、ありが、とう………?」
あ、あれ。
待って。
相手、お相手のお名前。
なんだったかしら。
「………」
和泉。
そう。
和泉、って。
そう名乗ったわ。
「ハイセ、?」
「ええ」
「お見合い、って、ハイセ、なの?」
「はい」