第5章 愛されて頂けますか
「まぁ西園寺様、お待ちしておりました」
ものものしい外見からは想像出来ないくらいに、料亭のロビーを一歩、抜ければ。
そこにはだだっ広く日本庭園なるものが広がっていて。
ライトアップされた中庭を綺麗に彩っている。
中庭を横目に、奥の個室へと通されれば。
すでに相手方は着座していて。
あたしたちが到着した途端に、席を立って頭を下げた。
『琲生がいなくなってもう1月立つ。このままお前をひとり家には置いておけないんだ。パパたちと来るか、それが嫌なら今すぐ、婚約だけでも結びなさい』
有無を言わせないパパの根回しから、たった2日後。
帰国した両親に連れられて、あたしは今、お見合いをしている。
どうせ向こうに行ったってパパもママも帰ってなんてくるはずない。
言葉の通じない国でひとりでいるなら、自由なこの国で、知らない誰かと結婚した方がいいに決まってる。
どのみち。
恋愛が出来るなんてはなから思ってないし。
あたしの運命は、生まれた時から決まってるんだ。
だから。
ハイセとだって。
結婚なんか出来るはずなんて、ない。