第5章 愛されて頂けますか
別に。
ハイセに言われたからじゃ、ないわ。
「お嬢様」
「今日も紅茶のサーブはいいわ。ありがとう。寝る前も、もうやらなくてよくてよ。早くお帰りになるといいわ。」
「ですが」
「いいのよ」
「…………」
だってほんとに。
いらないの。
飲みたいとさえ、思えない。
あんなに美味しいと感じてた紅茶も、甘いものも。
全然、味がしない。
「失礼致します、お嬢様」
「ええ、ご苦労様」
みんなが帰ってしまえば。
たったひとりになるこの家は。
あたしには、広すぎる。
広間から寝室へと向かう階段が、やけに長いし。
しんと静まり返った家の中は、寒気がするくらいに何にも聞こえない。
『お嬢様』
「………っ」
なんで。
なんでハイセのことなんか思い出すの。
いらない。
消えてよ。
寂しくなんか、ないんだから。
ハイセ、なんか。
いなくたって。
「…………っ」
なんで。
なんでいないの。
『お嬢様が、寂しいとき……』
いないじゃない。
いつもそばになんか、いないじゃない。
変態エロ執事のくせに。
あたしをひとりになんて、しないでよ。
馬鹿ハイセっ