第1章 僕と結婚していただけませんか
たぶん、あたしの認識が間違ってなければ。
彼は、この家の執事で。
あたしは、この家の一人娘。
間違っても結婚なんて出来る間柄ではないはずなのだ。
「それは、おおいに関係があるのでございます」
「意味がわからないわ」
「旦那様から、実は見合いを勧められておりますゆえ」
「は?すればいいじゃない」
「心に別の女性がいるのに、それは相手様に大変失礼かと」
「まぁそうね」
空になったティーカップに、新しいベルガモットティーを注ぎながら、彼は続ける。
「ですから、そのためにも結婚をして頂きたいのです」
「………っ」
注ぎたての紅茶が一気に口の中へ入ってくると、飲み込めなかったそれらが口の中から溢れていく。
もちろん、やけどするほど熱くもないそれは、適温に調節されているのだけれど。