第1章 僕と結婚していただけませんか
「大丈夫でございますか」
ゴホゴホと蒸せ込んだあたしの背中をさすりながら、もう片方の手にはいつの間にか冷たいお水が用意されている。
ほんと、完璧なくらいに用意周到なんだから。
「…………で、なんであたしがあなたと結婚しなきゃいけないのかしら?」
なんとなく悔しい気がして。
平静を装ってそう、問いかければ。
「……あなたの頭の回転の悪さには、心底ご感心いたす所存にございます」
ため息混じりにそう、信じられない言葉が降ってきた。
「は?」
なに?
聞き間違い?
今、なんつったこいつ。
「この流れでは、明らかに僕の恋するお相手はお嬢様しかいないでしょう」
「……………は?」
待って。
いや、あたしがおかしいの?
あたしの頭がおかしいの?
どの流れで、何だって?