第1章 僕と結婚していただけませんか
「……………は?」
ちょっと待って。
今、なんつったこの男。
「ですから、僕と結婚…」
「ストーップ!!」
にこやかに笑う自分よりも遥かに背丈の高い彼の口元を両手で覆う。
優雅に食後のティータイムを楽しんでいたあたしは、座ったままでは長身の彼に届くはずもなく。
立ち上がった拍子にテーブルから、数分前までケーキの乗っていた空のお皿と、フォークが滑り落ちた。
それを優雅な身のこなしで片手に受け止めると、カタン、と音を立てて彼はテーブルの上へと戻していく。
「………ありがとう」
「いーえ、僕の仕事ですから」
にこりと目元と口元を緩める彼は。
ゾクリとするほど美しい。
いや!
待って。
見惚れている場合ではなくてよ?
「ハイセ」
「はい。」
「あたしには、パパが帰って来ることとあなたとあたしが結婚しなきゃいけない意味がさっぱりわからないのだけれど」