第1章 僕と結婚していただけませんか
ストーップっっ!
たかだか一介の執事が、お嬢様に手なんて出していいと思ってるの?
何度も言わせて頂きますが。
彼はこの家の執事で。
あたしはいわば、ご令嬢。
クビどころの話ではなくてよ?
「あなた、どうなるかわかってるの?」
「どう、と仰いますと?」
「あなた今、あたしに何したのよ!」
「………そんなこともわからないほど子供だったとは、知りませんでした」
だから。
真顔でディスるな。
「違うわ!あたしにこんなことして、ただで済むと思ってるの?」
「はい、なので、時間もないので先に進めさせて頂きます」
「ちょ、ちょっとまって……っ………ん」
抗議のつもりで振り返ろうと足に力を入れれば。
ハイセの片手が首筋を這い、強引に反らされた首元と、それによって無防備に晒された首筋には、生温い感触のものが這い回る。
おかげで漏れでた甘い声。
まだまだ残る理性は、羞恥に震えすぐさま口元を両手で覆う。
「…………いい声で、鳴きますね」
低くそう、呟いたかと思えば。
首筋にピリリと走る、鈍い痛み。
それは場所を変えて、何度も繰り返された。
「もう、後戻りはできないのですよ、お嬢様。話せ、と始めに仰ったのは、あなたでしょう?」