第6章 お勉強の、お時間です
「………皇?」
「ハイセ」
押し黙るあたしを、心配そうにのぞきこむのは、深い黒曜石の瞳。
「ナイフ落としたの、拾って」
「………ええ」
訝しげに表情を少しだけ歪めて、席をたつハイセの立ち居振舞いはやっぱり、優雅だ。
気品も。
どこか上品すぎるその仕草も。
もともとの環境によるもの。
産まれた時からずっと、彼は御曹司だったのだから。
「どうぞ」
「ありがとう」
「!?」
差し出されたナイフの柄、ではなくて。
手を伸ばした先はハイセのネクタイ。
そのままネクタイごとぐい、っと力任せに引っ張れば。
バランスを崩したハイセは椅子の背もたれとテーブルに咄嗟に手を付いた。
「好きよ、ハイセ」
さらにネクタイを引き寄せて。
その柔らかな唇に、口付けた。