第6章 お勉強の、お時間です
寂しい。
寂しい。
広すぎる屋敷にひとりでいるには、幼すぎて。
あたしにはただのお化け屋敷。
窓を叩く風の音が怖い。
庭の木々をゆらす、風邪が怖い。
夏の日の、雷が怖い。
怖い。
寂しい。
使用人のみんなは、9時には帰ってしまうから。
誰でもいいからそばにいてほしかった。
ひとりでいたくなかった。
『お嬢様』
『絵本を、お読みしましょうか』
ある日。
若い執事が部屋に入ってきて、一晩中そばにいてくれた。
一緒に寝てくれた。
だけど、それは『いけないこと』だと、他のメイドが教えてくれた。
『いけないこと』だろーが、あたしには嬉しかったし、そんなの関係ない、って。
思ってたのに。
彼はある日突然、逮捕された。
部屋からは、あたしの写真がたくさんたくさん、出てきた。
あんまりその意味はわからなかったけど。
あたしが、興味の対象であったことはわかった。
だからその日から。
あたしは執事の興味の対象でいられるように、努力した。
そーすれば。
一緒に寝てもらえる。
広すぎる屋敷に、たった一人残されることはない。
寂しくて、泣く日々がなくなるのだと。