第1章 僕と結婚していただけませんか
そうよ。
あたしはその想いに応える義理もなければ、もともと叶わぬ恋なのよ。
初恋は淡いままで終わるものなのよ。
「旦那さまの許可はとってあります」
「えっ?」
感傷に浸っていたあたしを、鈍器でガツンと殴ったのは誰かしら。
頭が、非常に痛くなってきたわ。
「お嬢様同意ならば、致し方ないと」
「…………どんな説得したのよ」
「お嬢様と僕は、大変愛し合っていますと」
「は?」
「かわいい一人娘が愛した相手なら、どんな相手でも許すしかないと、泣いておられました」
………どんだけ甘いのよ。
しなさいよ、反対。
普通、よくあるじゃない。
娘には指1本触れるな!とか。
触れたら殺す!とか。
あるじゃない、そーゆーの。
いや、そもそも!
聞いてよ。
娘の意見。
あたし、この男を愛した覚えなんて1ミリだってなくてよ?
たかだか一介の執事の言葉、真に受けてんじゃないわよ!
「お嬢様、すごく不細工になっておられますが」
「……………」
こいつさっきから。
ほんとにあたしを好きなわけ?
好きな女性に対する発言では明らかになくてよ?
そもそも。
『お嬢様』、に、する発言ではなくてよ?