第6章 お勉強の、お時間です
「ハイセは、あたしのどこが好きなの?」
ルームサービスのトーストとエッグタルトの甘い匂いの漂う中。
いつもならあたしの一歩後方で控えているはずの執事は今は、あたしの目の前に着座し優雅に珈琲を口に運び入れているところだ。
そんな中、驚いたように開かれた漆黒の瞳は、愛しそうにその瞳の面積を狭め、あたしへと向けられた。
「理由など、ありません」
「は?」
「あなたに救われたあの日、まだ幼い6歳の少女に宿る女の光を見たから、と言えば納得していただけますか」
「ごめん、全っ然わかんない」
「ですから、理由などないと申し上げたのです」
一笑して、再び珈琲へと意識を戻すハイセに、むぅ、とわざとらしく膨れて見せれば。
「なぜそこまで知りたいのですか?」
黒曜石の瞳が、のぞきこむ。
しかも眼鏡とかゆーオプション付き。
「理由なんて、ないけど」
ただ知りたい、そう思っただけで理由なんて考えてなかったし。別にただの興味、そのくらいでしかない、はずなのに。そっぽ向いて赤くなるなんてきっと、彼を喜ばせてしまう材料になりかねないのに。
何故だか顔の熱は引いてはくれない。