第6章 お勉強の、お時間です
『ねぇハイセ、あたし、パパもママも大好きよ』
『ええ、知ってます』
『ハイセも、大好きよ』
『そうですか』
『だからハイセ、あたしを好きになって』
『…………』
『ハイセが、好きよ』
『お嬢様が大人になったら、お答えしますよ』
『大人?それはいつ?』
『そうですね、結婚できる年齢、くらいですね』
『いつ?』
『……あと、10年たったら』
『10年?16になったら、ハイセ、結婚してくれるの?』
『ええ』
『約束よ、ハイセ』
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「………………」
あれは、いつの夢?
いつの、記憶?
まだまだ怠さの残る瞼をゆっくりと開けば。
カーテンの隙間からは朝を告げる陽射しがうっすらと見え隠れしていた。
「おはようございます、お嬢様」
「!」
ぼんやりとカーテンに向けていた視線の先には。
すでにきちんと身なりを整えた、いつもと何ら変わらない執事の姿。
「はい、せ」
だけどひとつだけ。
「眼鏡………っ?」
昨日は確かに高価なスーツに身を包んでいたハイセだけど、今はいつもと変わらず執事服を身に付けていて。
いや、うん、そんなところはとりあえず隅っこにでも放り投げてもいいくらいに。
あたしの視線が捉えたのは別のところ。