第6章 お勉強の、お時間です
「和泉家所有の、ホテルでございます。最上階は、一般の方々には提供されておりませんので」
「そうなの?」
「ええ、最上階には、裏口駐車場からしか行けないようになっているのです」
慣れた手つきで、ハイセはテーブルへと置かれたシャンパンへと手を伸ばした。
「お酒?」
「明日は日曜日、泊まっても差し支えないでしょう?」
「!」
と、泊まり?
ハイセ、と?
「………泊まる、の?」
なんとなくおずおずと、離れたところからハイセを見上げれば。
少しだけ、驚いた顔したハイセが、いて。
だけどそれはすぐにいつものように、切れ長の漆黒の瞳はさらに細められ。
ハイセはあたしとの距離を縮めてくる。
「ハイセ?」
「怖がらせましたか?」
「え?」
「怖い、ですか?」
不安そうに揺れる、黒曜石みたいに真っ黒な瞳。
吸い込まれるように、目が離せない。
「………あまり、怯えた目で見上げないで下さい」
「怯え……っ、別にっ、そんなんじゃ……っ」
「いいえ」
「え」
「煽る材料にしかならない、と申し上げているのです」
「あお………んんっ」
顎にかけられたハイセの掌で、目一杯上へと向かされると。
すぐに唇が重なって。
いくら屈んでくれてはいても、身長が違いすぎて踵が宙へと浮く。