第1章 僕と結婚していただけませんか
「………………」
「このお屋敷に来たときから、お慕い申しております」
恭しくあたしの前にひざまづき、手の甲にキスを落とす、その一連の動作がすごく綺麗で。
思わずここが日本だという事実を忘れそうになった。
いや。
待って。
今、ここに来たときっていったよね?
言った?
「ねぇハイセ、あなた今、いくつ?」
「28になりました」
「えっ?」
初めて知ったハイセの年齢。
初めてハイセに会った時から全然変わらないその容貌と、衰えを知らない筋肉は、いつだったか本で読んだ吸血鬼だと思ったほど。
もしかしたらここに来たときから彼の成長は止まってしまったのだろうか。
なんてどうでもいい考えで頭をいっぱいにしたいくらいに、彼のカミングアウトはあたしの想像の斜め上を行く。
「ハイセ、それあたし、いくつ?」
また、ピクリとハイセの眉が動く。
「いくつ?」
「………」