第1章 僕と結婚していただけませんか
ハイセ、和泉 琲生、は。
無駄にほんと、顔だけは昔からいい。
いや、顔だけじゃなくて全てにおいて完璧で。
うちにこの男が来てから10年、この男がミスしたのを見たことがない。
昔から女の人たちにモテるのも知っていたし。
忙しい両親のかわりに授業参観にきていたハイセに、担任が見とれて、授業が進まなかったことも多々、ある。
新しい家政婦の人が入ってもすぐ、ハイセに見惚れて仕事にならず、仕舞いには仕事よりも色気を優先してしまうのだ。
そんなのち、いつの間にか家政婦は来なくなり、ハイセが食事など身の回りのこともこなすこととなった。
そんな、超絶美形な執事に。
男に免疫のないあたしがこんな至近距離で、しかも吐息まで届きそうなこの距離で。
体が勝手に熱をあげてしまうのはたぶん仕方ないことなんだ。
「……………わかった、わかったわよ。ちゃんと聞くから、離れて」
絞り出すように言葉にすれば。
彼は満足したように恐ろしく妖艶な笑みを溢して。
さっ、と。
その手を離した。
「………」
慌ててパ、と。
踵を返したあたしの後ろでは、ククク、と、くぐもった笑い声。
「-----で?」
顔は背けたままに短くそれだけ言葉にする。
「はい」