第5章 愛されて頂けますか
あ、あれ?
あれあれ?
何この意味不明な記憶。
あたし、そんなことハイセに言ったかしら。
「ハイセ……」
運転中のハイセを正面から見上げ見れば。
ハイセは一瞬だけ視線をあたしへと向けると、すぐに進行方向へと向けた。
左手の甲を口元へ持っていき、その顔は憎らしいくらいに笑っていたのだけれど。
「何も泣くことはないでしょう、お嬢様」
「………っ」
たった6歳の醜態を今の今まで忘れていた意味がわかったわ。
恥ずかしすぎるもの。
あたしったら、見ず知らずの男性になんてこと言ったのかしら。
「………忘れたい」
笑いすぎよ、ハイセ。
こっちは真剣にどうやったらこの醜態を忘れられるのか葛藤しているのに。
「忘れる必要、ないでしょう?少なくとも僕は、あなたに救われました」
「え」
正面を向いていたハイセが、ゆっくりとこちらを向くと。
官能的に瞳を揺らすハイセと視線がぶつかった。
「言ったでしょう、お嬢様がランドセルを背負っているころから、お慕い致しております、と」
「………」