第9章 愛されサイダーほろ苦く。
皆さんこんにちは。
二宮和也、アイドルやってます。
夏らしく浴衣なんかきちゃって。
今回はみんなで温泉来た設定のCMらしい。
ファンの子たちが喜ぶとは言え誰がこんな設定決めたんだかね。
目の前の人の顔を覗けばいつものお茶の間向けのヘニャヘニャ笑いでカメラ向いてるもんだから…
あぁ、もう、
「こっちの気も知らないで……」
誰にも聞こえないように小声でボヤく。
原稿の感じ、ペアでの演出内容が割とファンの子が好きそーな感じで攻めてたから
ボーッとした無の横顔、見つめても
「ん?なんかあった?」
なんて言われちゃって、
「あ、 …いや、べつになんでも…」
「仕事だから」って自分に言い訳して
そう答えるしかないじゃん。って。
だから、ホッとしたような残念なような気持ちを抱えて撮影に臨んだんだ…
撮り終わって前室に戻っても
「おぉー、おかえり。お疲れ様。」
としか言われなくて…
そりゃそうだよな。
仕事だもん。
そう唱えて自分の首を絞めていく。
隣の翔さんは血相変えた相葉さんに何か耳元で囁かれて茹で蛸になってるけどね。
いいな、なんて思っちゃう自分がバカみたい。
そう思い込んで感情に蓋をしたんだ。
なのに、撮影が終わった途端に仏頂面で家に帰るまで移動の車じゃ何にも喋らないし、マネージャーには仲直りしろよ、だなんて言われるし。