第5章 こう見えて私は恋をしていた
「あ、あの、光忠さん」
「うん?なんだい?」
「あの、その、このリボンの...色だけど...」
そう、このリボンバレッタの色!
凄く好みだけどそれだけじゃなかった!
私の思い違いなら恥ずかしいけれど、さっきから恥ずかしい姿は沢山見られているからもうどうにでもなれだ!!
「あ、気付いてくれた?ふふ、僕の色みたいだって!」
「!!?」
これまた嬉しそうに、悪戯っぽく笑う光忠さんは可愛い...じゃなくて!!!確信犯か!!
「もちろん、君に似合うと思ったのは事実だよ?けれど何より...僕の色を身に付けている君を見たかった、てのもあったんだよねえ」
「み、光忠さんの、色」
「そう、僕の色!」
これからずっと、付けていて欲しいな!とまたにこにこと笑う彼に、それは一体どういう意味なんだと問いたくても...もう何も言えなくなってしまった。
けれど、ずっと見たいと思っていた光忠さんの優しい笑顔を見ることが出来たから...良かった、のかな...。
その笑顔に釣られてか思わず私も笑う。
久しぶりかもしれない、光忠さんの前でこんなに穏やかな気持ちで笑うのは。
「...やっぱり、君は可愛いね」
部屋には桜の花びらがひらひらと舞い落ちて、しばらく止まることは無かった。