第1章 夏が好き
そして暗闇の中、花火に照らされる君はこの上なく綺麗で艶めかしいだろう。
…そんな下心には、今はそっと蓋をして。
「…火、大丈夫なの?」
「怖くないと言ったら嘘になるよ…でも」
君が一緒だから。
それは、上辺なんかじゃなく心から思う事だった。無様な僕でも好きでいてくれる、そんな君が一緒だから。
そっと、この時期には似つかわしくない冷たい手を握って、指を絡める。
「……いいかも」
「良かった、決まりだね!」
誰よりも一番に君の浴衣姿が見たくて、着付け役を買って出たけど、自分でできると一蹴されてしまった。つれない、だけど、そこも好きな所なんだ。
ふと、庭にいる短刀くんたちに呼ばれ手を振る君は、もう憂いた顔をしていなかった。
「私も、好きになれるかな」
「もちろんさ」
指を握り返してくれた君が僕を見て笑う。
嬉しくて僕も笑った。
願わくば
次の夏も、その次も
君と、一緒に