第5章 こう見えて私は恋をしていた
正直私は"女性らしい"方に分類されない方で。
長身短髪、加えて長女という環境も手伝ってか、なんともまあ、"男前"に育ってしまった。
『お前なら大丈夫だろう』
などと言われてしまえばこなすしかなかった、巧いかわし方などわからなかった。所謂世渡り下手というやつだ。
環境のせいばかりにはしない、もちろん自分の"女性らしさ"との向き合いが少しばかり足りていなかった。そう、少しばかり。
審神者になったのは、なんでだったかな。
興味があったから、歴史を守りたかったから。
色々挙げられるけれど、多分きっとそんな環境から目を逸らしたかったのかもしれないと今は思う。
「ああほら、また寝癖ついたままで君は!」
「あーはい、スミマセン」
「流そうとしても駄目だからね?!」
比較的、刀剣男士は顕現した審神者に対しての好感度は良好だと聞く。
そんなメタい話は置いといて、確かに癖や価値観の差はあれど『比較的』良好な方ではあると思う。ぶつかっても、会話ができないとか話が通じない、などというタイプはいなかった。
そんな中、この彼は他の男士に比べるとその『好感度』とやらが高めだと思う。
「ここに座って、髪を整えてあげるから」
「いいよ別に...私がやっても...」
「座って」
「...ハーイ」
『好感度』というかあれだ、『世話焼き度』?
彼自身見た目はもちろん、立ち振る舞いや精神面でも格好よさに拘りを持っているが
周りや私に対して
いや、違うな
特に私に対しては本当に口うるさ...拘りを説かれているように思う。
まあ、確かに自分の主が見た目気にしないズボラさんなのは嫌だよなあ...でも同田貫とか御手杵は采配ちゃんとしてりゃ構わねえって言ってくれたんだよなあ...主としてやることきちんとやってりゃいいんじゃないの?
と、問うたらこの彼は『そういう問題じゃあないんだよ』と一蹴したけれども。
ああ、そういうことか、そうか。
と、まあ、こうして色々考えているようでそうでもない私の元に顕現されてしまった彼は毎日甲斐甲斐しく世話を焼いてくるのである。お母さん!
こう見えて、私は彼に恋をしていた
※
演練に出れば、相手の審神者さんと対面することになる。
色々な人がいたがやはりというかなんというか
圧倒的に女性が多かった。