第3章 君ありて幸福
『衝羽根朝顔のようだね』
あの、押し花。
やっぱり僕には分からなくて、こういった事ならば彼が良いだろうと歌仙君の元を訪ねていた。
『へぇ、聞いたことのない名前だ...珍しいね』
『僕は、あの主がこれをしたという事の方を珍しく思うよ』
『あ、歌仙君、酷いなあ』
『はは、君だって笑っているじゃないか』
歌仙君が持つ花の図鑑にちょうど載っていたようで、僕はその衝羽根朝顔の記事を読ませて貰った。
やっぱり少し朝顔に似ているな、他にもたくさん色があるのか...生まれは異国のようだけれど、花屋さんで手に入れたのかなあ。
などと考えを巡らせながら読み進めていると、一番下にある項目に目が止まった。
『...』
『.......参ったなぁ….』
『...燭台切、どうしたんだい?』
『いや、うん...』
なるほどね、これが”本来の”君のやり方か
ちょっと、いやかなりやられたよ
『...ああ、そういうことか...へえ、あの子は本当にやるものだねえ』
思わず固まってしまった僕をよそに、手元にある図鑑を覗き込むと同じ場所を目にした歌仙君は感心したように笑みを浮かべた。
花には、それぞれに”言葉”が存在するらしい。
生息する場所や国の文化に触れる中で、人の手によって作られたものが、伝承されている。
衝羽根朝顔に付いた言葉は
”あなたと一緒ならば心が安らぐ”
ああ
ああもう、本当に君って人は...!
普段はそんな事言いもしないくせに!
『...完全に、やられたよ...』
『ふっ、君もなにか返してやればいい、どのみち返事を書くのだろう?』
『もちろんだよ...このままじゃ、格好つかないからね...!』
返事に何を書こうか少しだけ考えていた所だったから、ちょうどいい。
言葉から直接に流れ込むものと、花
受け取った君もその威力を思い知ればいい
そうだな、僕は赤い天竺葵にしようか
その花に込められた言葉は