第7章 仮面舞踏会
ガタッガタッ 馬車の揺れる音が耳に入ってきた。
(はぁ…なんでよりによって…)私は会場でナンパされた挙句睡眠薬を飲まされ馬車に乗せられていた。
「君を今より綺麗にしてあげるよ…」男の手が私の髪に触れた。
(キモイ…と言うか…こいつが惨殺事件の犯人か…)私は目を瞑っていた。
「あぁ、綺麗な君が傷だらけになる…はぁはぁ…」男はまるで興奮したかのように息を荒らげた。
(キモイ…悪趣味…私以上の悪趣味だな…)私は口に布が巻かれており手足は縛られている状態…身動きが取れない。
馬車が止まると男は私を担いで歩き出した。
「さぁ、ここからが楽しみだ…」男は私を板の上に置くと私の着ていたドレスを剥がした。
(こいつ…今すぐ起きてシメたい…)私は屈辱を味わいながらも我慢した。
「なっ…なんだこの胸元の傷と首の傷は…」男は私の自殺跡を見るなり板を殴って怒りだした。
「こんなに美しく肌の人に…いったい誰が君に見にくい傷をつけたというのだ!!」男は訳の分からないことをブツブツと言いまくっている。
(そろそろ起きてみるか…)私はゆっくりと目を開けて男を睨んでみた。
「おや、もう睡眠薬の効果は切れたのか?」男は私が起きたのを確かめると刃物を突きつけてきた。
「君の肌に傷を残したのは…誰だ…」男の目は狂気で満ちていた。
(あ〜めんどくさい…自殺跡だよ…)私の口には布が巻かれているため喋れない。
「ん〜ん〜!」私は布が邪魔だということを伝えてみせた。
「なるほど…君にまとわりついてくる男がやったんだね…なら、君のためにそいつを始末してくるよ!」ーいや、全然違〜う!なんだよその便利変換機能!逆に怖いから!
(あ、ダメだこいつ…人の話聞かないタイプやわ…)私は諦めてため息をついた。
(クロウと小生が会場にいた時こんな馬車なかった気がするんだけどなぁ…)小生は妙な馬車を見つけたので後を追っていた。
予想通り、中からは黒いドレス姿のクロウと男が出てきた。
「人のモノに手を出すとは…なかなか勇気のある人間だねぇ〜ヒッヒッ」小生は木の上から降りて男の入っていった屋敷まで歩いた。
「動くな!」用心棒達が銃口を向けてきた。
「さて、返してもらうよ…小生の大切な人を…」小生は卒塔婆を取り出して用心棒達に飛びかかった。
(もう少しだけ待っていておくれ…クロウ…)