第4章 『野良猫ギャンブラーに首輪をかけて』有栖川帝統 R18
「よう。」
7月6日。
土曜の休日出勤の帰り。
最寄りの駅の改札前に見つけたカーキのコート。
「だい、す?」
改札への集団から1人抜けて帝統のところに向かうと、帝統は歯切れ悪くあーうーと唸り目線を彷徨わせる。
「この後、暇か?」
「ひま、だけど。」
帝統は、ん、と手を差し出すと私が手を乗せるのを待つ。
そっと乗せるとすぐに指が絡まりそのまま改札とは逆方向へと引かれていく。
「ちょっと帝統⁈どこ行くの⁈」
「飯。大勝ちしたから付き合えよ。」
「せめて先に連絡入れてよ!」
ぴたり。
止まった帝統は私の方を振り向く。
「行くの、行かねーの。」
体を下り膝に手を置いた帝統。
ちょうどの目線に心臓がどきりと鳴る。
「行く。」
「っし!じゃあ行くぞ!」
嬉しそうに笑った帝統は繋いだ私の手をぎゅっと握り直すと暗がりに向けて歩き始めた。