第7章 核心
『彼女の、あの能力。
幸い、街では、彼女の美貌が先行して、
まだ気付かれてはいないだろう。
まるで、風や草木の声が、聞こえるみたいだ。
彼女の能力は、
いずれ、
大きな歯車を動かす力になる。
そして、彼女の出生に、その秘密があると踏んだ。
昨夜王都で、彼女の雰囲気に似た婦人を見かけた。
その婦人について、調べてみたが、
残念ながら、何も出てこなかった。
だが、婦人の召使いに、彼女の写真を見せた時、
一つの手掛かりを掴んだ。
昔、街の外れに、
親子の家があった。
その家には、美しい娘と、
母親にしては、年が離れている婦人。
その親子は、本当の親子ではない。
捨て子だった幼い娘を、
自分の子として、育てていた。
そして、当時、本当の親子ではない、
娘は、自分の戸籍に入れてやれなかった。
婦人は、途方に暮れた。
戸籍を持たない娘を、病院に連れて行けなかったからだ。
そこで、婦人は、必死に勉強して、
草や木を主とした、薬草学を娘に教えた。
だが、その婦人は、襲ってきた男たちに、
殺害されてしまった。
それから、その娘の行方が分かっていない。』